僕と柚羽さんの間に沈黙が訪れる。

僕たちの耳には、周囲の喧騒が何一つとして入ってこなかった。



「柚羽さんまで何言ってんだよ」



僕は泣きそうな声で言う。

柚羽さんは僕の顔など見ずに、ただ記憶を辿っている。



「そうよ。あたし……死んだ」

「だからっ!そんな冗談……。だってオレ、柚羽さんちでコーヒー飲んだじゃん。隣の部屋の人は空室だって言ったけど、家具もちゃんと置いてあったじゃん!」



そうだよ。

柚羽さんの部屋は、誰かが住んでいる、そんな生活感がちゃんとあった。


キッチンでお湯も沸かした。

コーヒーを注ぐカップもあった。


永輝さんのための灰皿もあった……。