転落だってさ……。

僕は君のアパートに行ったこともあったのにね。

きっと遼太郎さんはそのことを知らないから。

だからこんな冗談を言うんだよ。




そして、僕は―――。

今こうして、涙を何度も拭いながら、君のアパートへと走ってる。


泣いているのは、嬉しいからだよ?

永輝さんが、柚羽さんと結婚するつもりでいたんだ。

永輝さんはいなくなってしまったけれど、永輝さんの気持ちがきちんと柚羽さんにあったことを話さなきゃ。


……泣いているのは、「柚羽さんが死んだ」と言った、遼太郎さんの話を真に受けているからじゃないんだよ。



僕の手の中には、君の名前が刻まれた、少し大きめの指輪があるんだ。