遼太郎さんと会って、もしも事実が違っていたらそのまま柚羽さんのアパートに直行しようと思っていた。


だけど、永輝さんはかんなさんと結婚するつもりだったこと、死んでいること。

その事実は返られなかった。


それなのに僕は今、柚羽さんのアパートに向かっている。


遼太郎さんが『ちゃんと好きだったと思う』と言ってくれたことをどうしても伝えたかった。

なんの希望にもならないのかもしれない。


でも、永輝さんの気持ちを知りたかったという柚羽さんに、僕はどうしても伝えたかった。



――コンコン……コンコン



夕方に柚羽さんに会うのは初めてだった。

永輝さんと柚羽さんが会っていたように、僕たちが会うのはいつも夜だったから。


何度かノックするけれど、ドアは開かれない。

いつもカギがかかっていないドアノブを回す。