「でも、泣いたところで過去は変えられないんだよ。永輝はかんなさんを選んで、そして死んだ。そういう現実をきちんと受け止めないといけないんだよ」



まるで自分に言い聞かせるように、柚羽さんは僕にそう告げた。

そう決心した彼女に、これ以上永輝さんのことを持ち出しても、かえって傷を深めるだけだと僕は思った。




「…柚羽さん。つらいときはオレを頼ってよ。年下で頼りにならないかもしれないけど、でも、そばにいることくらいはできるから」



僕は勇気を振り絞ってそう言った。

こういう時、たいてい柚羽さんは僕を子供扱いしていた。


だけど……。



「……遠慮なくそうさせてもらうわ」



柚羽さんは静かに笑うとコーヒーを一口飲んだ。