柚羽さん、1人で泣いているんじゃないだろうか。

あんなに冷静でいたけれど、それは精一杯の強がりだったんじゃないだろうか。


永輝さんが死んで、永輝さんとかんなさんが結婚する予定だった。

あまりにも辛い現実を2つも同時に突きつけられて、人は冷静でいられるものなのだろうか。



「晶ー?どこ行くの?」



いても立ってもいられなくなった僕は、急いで玄関に行き靴を履いた。



「ちょっとシャーペンの芯、買ってくる!」

「気をつけなさいよー?通り魔事件の犯人捕まってないんだから」



なんだよ、それ。

そんな事件、聞いたことないぞ?

ワイドショー大好きのおふくろに、たいがい呆れる。



自転車のカギを外し、僕は勢いよく飛び乗ると猛スピードで柚羽さんのアパートに向かった。