テディベアは痛みを知らない

教室にいると、私は私の有能さと、そして手に入れた不自由さを実感することができる。

「あ、一ノ瀬さん一ノ瀬さん」

「なに?」

高校に入ってから染め上げたのだろう茶髪を巻いた女の子が、私の席へやって来る。

残念だけど、まだ私は彼女の名前を知らない。覚えてない。

「こないだの数学、ちょっとよくわかんなかったんだけどさ、ノートとか見せてくんない? 私今度当たるんだよねー」

「あー……ごめんね、私ノートちゃんと取れてないんだ」

「え、そなの?」

両手を合わせてくれているところに悪いけど、事実だ。

「うん。私ノート取るの遅いから。家で自主勉なんだ」

「へぇー、なんだそっかあ」

「あ、でも小百合ならノート取ってるよ。ね小百合」

「うん、まあ」

なかば強引に、私の横にいたひとり、牧田小百合へ話を振る。

黒い髪を白のヘアピンで留めているだけの彼女は、私の高校からの友人。

例の、文系部の子だ。ちなみに、文芸部というのに所属している。将来は作家になりたいそうだ。