いかにも南国らしく、フロアは蒸し暑くて、あたしたち二人は二様に汗ばみ始める。


「すぐ着替えだね」


「ええ。あたしも上着脱がないと暑くてしょうがないわ」


 あたしがそう言って、羽織っていたやや薄めの上着を脱ぎ、手に掛けた。


 上着には香水の匂いが染み付いていて、残り香となっている。
 

 あたしはいつも値段がやや張る、外国産の香水を惜しげもなく振っていた。


 それに旅行となると、何もかもが日本からの持参だ。
 

 普段あたしは何に関しても、普通の人が使うものとは値段が桁違いのものばかり使っていた。


 例えば洗顔するときは、安手の洗顔フォームなど使わずに、馬鹿高い化粧石鹸を使っている。


 ボディーソープや化粧水、歯ブラシや歯磨き粉まで持ってきていた。


 それにあたしはコーヒーもビンに詰めて持参している。


 このコーヒー豆も普通のスーパーなどでは手に入らない、超が付くほど高い代物だ。