寺井は今でもボーイ兼バーテンダーで毎晩刺激的なカクテルを作ってくれている。


 あたしは彼の仕事ぶりを評価していたので、別にとがめだてするような過去のことはもういいと思っていた。


 寺井の仕事はカクテルを作るためにシェイカーを振るというものだ。


 別に彼に犯罪行為の過去があったにしても、国税の人間たちはモノを見つけることが出来なかった。


 失敗は失敗なのである。


 そして寺井はそれから毎年確定申告が行われる季節になると、その年働いてもらった給料からちゃんと税金を納めていた。


 未だにその当時の査察官たちはいるにはいるようだが、結局寺井への査察は失敗だったわけで、二度と店には来ない。


 ふっとあたしがそんなことを考えていると、目の前に澄んだ水を出す滝があり、あたしはいったん思考し続けていた頭を止めて、喬に向かい言った。


「楽しみましょ」