喬はホストというサービス業に就いているからか、あたしに対して嫌な顔一つしなかった。
 

 それに彼は表面的には擦れていても、根までは汚れていない。


 彼の言動の端々(はしばし)からそれが分かる。


 喬はあたしといるときは純良な青年だった。


 夜の歌舞伎町に行けば、表情や態度がガラリと変わるのかもしれないが……。


 そしてあたしも喬も昼を迎え、近くのカフェで食事を取ることにした。


 ビーチのすぐ目の前にランチ専門店が一軒ある。


 そこが海岸線から一番近い場所にあり、あたしたちはパラソルを出て、腕を組んで歩きながら、ゆっくりとその店へ向かった。


 喬は体が絶えず火照っているからか、持っていたペットボトルを捻り開け、口を付ける。


 大きな椰子の木が通りにずらりと並び、実が生(な)っていて、あたしも喬もそれに釘付けになっていた。


 あたしたちはランチ専門店<ラクセリーオ>へと入っていく。