ジャブジャブという水の撥ねる音が聞こえてくる。


 そしてあたしは彼が出てくるのを待ち続けた。


 そう、二十分ほど経ってか、顔を洗って整髪までした喬が出てきて、あたしに、


「俺、出かける準備出来てるよ」


 と言う。


 確かに喬は綺麗な顔をしていて、スタイリングムースの香りが漂ってきていた。


 あたしは彼に向かって、


「じゃあ行きましょ」


 と一言言い、歩き出す。


 部屋を出ると、廊下には熱気が滞留していて、あたしたちは二人とも顔を見合わせて思わず笑ってしまう。


 あたしたちは腕を組んで、ゆっくりと歩き始めた。


 あたしと喬――、互いに恋愛し続けてから長いからか、双方に葛藤などの感情はない。