洗顔し、鏡台でメイクまで済ませたあたしは身支度を整え終わったので、ゆっくりとリビングへ戻ってくる。


 下着の上から一枚羽織っただけだったので、あたしはクローゼットから洋服を取り出し、幾分よれていたのを直して着た。


「亜紀子さん」


「何?」


「俺、今日暇なんですよ。今から俺のマンションに来ません?」


「あなた、都内のどこに住んでるの?」


「新宿の外れですよ。家賃十万のマンションです」


「あたしが若い頃と似てるわね」


「亜紀子さんも昔はそうだったんですか?」


「ええ。あたし、昔は超貧乏暮らしだったの。今はお金が有り余ってるから六本木に住んでるんだけど、その当時は相当貧乏してたわ」


「昔からお水のお仕事だったんでしょ?」