高層ホテルから一望できる光景は美しいのだが、あたしは暑さでまるで喉の奥がヒリヒリするように痛い。


 あたしは窓辺に腰掛けると、日本から持ってきていた荷物からタバコの箱を取り出し、一本抜き取って銜え込む。


 そして先端に火を点(つ)け、ゆっくりと燻らせる。


 タバコはメラメラと燃え始め、燃えた部分からは紫煙が上がった。


 あたしは「フゥー」と息を吐き出しながら、タバコを吸い続ける。


 吸い刺しだが全然気にならない。


 窓際にある換気扇は回っていて、煙を絶えず外へと逃がしている。


 ふっとベッドの方に目をやった。


 喬は相変わらず眠っていた。


“やっぱし疲れてるのかしら?”


 あたしはそう思いながら、燃え尽きてしまったタバコを灰皿で消し、大きく一つ深呼吸する。