それは四谷でビルのワンフロアを借りて、IT企業を経営している種村久隆だった。


 種村とあたしが知り合ったのは今から九年前の二〇〇〇年で、ちょうどIT業界は短期間だが、バブルに沸いていた。


 種村は案外堅気な男で、店に入ってきても部下たちには大酒を飲ませるが、自分は水割り一杯で我慢しているようだった。


 あたしは目の前にいるスポーツ刈りの頭をした青年実業家の真意が分かっていた。


 彼はあたしを抱きたいのだ。


 そして実際、種村はその夜、あたしが店を閉めてホステスの女の子たちが残らず帰ってしまったことを確認し、


「今から二人きりでゆっくりしない?」


 と誘ってきた。


「……」


 あたしが黙っていると、種村はあたしを二人以外誰もいない店内で抱く。


 そして囁くように言った。