確かにその当時はアダルトビデオ業界も大盛況で、あたしの高校時代の先輩も女優になって出ていたぐらいだ。


 その先輩は名前を大河原松子といい、女優でビデオに出演するときは、川中桂という名前で出ていた。


 今は普通に家庭に収まり、世田谷区内にあるマンションに旦那と子供二人で住んでいる。


 あたしは大河原先輩からよく言われていた。


「男優さんのテクニックは凄くて、誰でも絶対イっちゃうわよ」と。


 それに先輩の友達で、ジャスト四十歳ぐらいの人が、熟女役で出演しているらしかった。


 その人は未だに出続けているらしい。


 その熟女役を務める田原聖子という人はビデオで儲けていて、今でも財布の中の万札が千円札ぐらいにしか見えないぐらいしっかりと稼ぎ続けているようだった。


 あたしは大河原先輩や田原さんのことは気に留めずに、普通に水商売に精を出そうと思っていて、邪(よこしま)な気持ちは捨てている。


 AV業界もお水の世界も、男たちの夜の欲望をそそらせるものと分かっていながら……。


 そしてあたしは二十五歳になって独立し、貯めていた貯金を叩いて銀座に店を構えた。