やはり生活感がまるでないあたしは、六本木から江ノ島までタクシーを飛ばし、着いた海岸の外れにある、人目のあまりない場所に来て、ビンを取り出す。


 最初、サラサラとした白い骨を少しずつ手に取り、徐々に撒き始める。
 

 そう、ものの数分だったか、喬の骨はいかにも夏らしい南風に乗って、ゆっくりと宙を舞い始めた。


 そしてほんの数十秒掛かり、彼の骨を全部撒き終えたあたしは、海岸を出てタクシーが拾える町中まで歩き続ける。


 十分ぐらい放心状態で町を歩いていたあたしは、自分がいる歩道に向かって猛スピードでトラックが一台突っ込んでくるのがはっきりと分かった。


 だが、あまりにも突然のことで避(よ)けようがない。


 バーン。


 あたしは跳ね飛ばされ、宙に舞った瞬間、思いっきりアスファルトに叩き付けられる。


 あたしは意識が遠くなっていくのを感じていた。


 密かに心の中で、


“喬、これで一緒の場所に行けるわね”