FIN
 あたしは六本木の自宅マンション前からタクシーを飛ばして、都内の西側に位置する霊園に辿り着き、喬の家の墓前で手を合わせて、今は亡き彼を偲(しの)んだ。


 あたし自身、普段から銀座のクラブでママをやっているが、数あるお客さんの一人が亡くなったりしても別に何も言わないし、もし聞かれたら「ああ、そうですか」と適当に受け流しておく程度だ。


 それだけ、あたしは性格がドライなのだった。


 ホントはこの性格を直したいのだが、いかんせん、あたしは十年以上東京の水を飲んできていて、大都会に棲み付いているからか、自然と人の死などに関しても冷淡になってしまうのだ。


 別に人が一人死のうが、自分の経営する店にほとんど影響は出ないし、返ってあたしは年齢の行った固定客層だけじゃなくて、自分の店に来る客の層がもっと若い人たちにも広がって欲しかった。


 あたしはそう思いながら、毎晩淡々と店を営業し続けている。


 ただ、恋人の死となると、さすがのあたしも尋常じゃいられなかった。


 あたしは喬の死を未だに受け入れられずにいて、降りかかってきた悲しみは大きい。


 墓前で手を合わせ、自分より先に若くして天へと旅立っていった彼の御霊(みたま)を慰める。