この愛嬌のある勇敢な精霊との出会いは、かれこれ半月ほど前の事でした。


たまたま立ち寄った宿屋で出会った旅の商人の、売り物の中に混じっていたくすんだ水晶のネックレス。

何の飾り気もないそのネックレスは、気付けば商品に紛れ込んでいて、商人もいつ仕入れたのか記憶にありませんでした。

商人は若いレオノーラを見て、恰好の商売相手だと、持ち合わせのアクセサリーを広げて商売を始めました。


べっこうのかんざしに、さんごの髪留め。綺麗な女の人の横顔が彫られた、カメオのブローチ。

どれもよい品ではありましたが、お金の持ち合わせもないレオノーラは、首を振って断ろうとしました。


その時、端っこにそっと置かれているそのネックレスに気がつきました。

黄色くなり、透明感の失せた水晶が、何故だかすごく気になって、レオノーラは手を伸ばしました。


「ああ、こりゃあダメですよ。ガラス玉のほうがまだマシさ」


商人は自分の売り物なのに、水晶のネックレスを見て顔をしかめました。