会社側からすれば、この処置が気に入らないというのであれば、辞めてもらって構わないというスタンスなのであろう。

よほどのことがなければ、杉崎が本社に戻れることはもうない。

杉崎は出世コースから外れてしまったのだ。
2年前、杉崎は黒川という大物政治家と「修羅(しゅら)」というカルト宗教団体との関係を調べていた。

カルト宗教とは反社会的な宗教団体を指す言葉である。

修羅は、都内を中心に活動している新興宗教の団体で、終末思想(しゅうまつしそう―この世の終わりが近いという考え)を語り、人々の不安を煽ることで、信者の数を増やしていた。

彼らは、今の世の中がどれだけ腐っているかを、日夜話しあい、反社会的な思想の徹底をはかっていた。

信者達の睡眠時間をとことんまで削ることによって、彼らの正常な思考を鈍らせ、

そうした状態を作った上で、教団の思想を繰り返し聞かせることによる、マインド・コントロールを行っていた。

そんな、危険な活動を行っている宗教団体の背後に、日本を代表する大物政治家の存在が見え隠れしていたのである。

杉崎は、修羅を辞めた信者達から、丹念に情報を集め、記事に出来る段階まで、内容を固めていた。