ステージに詰め寄る観客を端から端まで見ても、奈々と透の姿がない。
その後もヘッドスピン、ラビット、アローバックとブレイクダンスを基本に踊っていく。
あかん……もうラストやぞ。
焦りが募ったその時。
「翔太キメろーーっっ!!」
そう一際デカく叫んだ声の主を探す。
――奈々!
叫んだのは透で、その隣には待ち焦がれた奈々の姿があった。
「翔太やれっ!」
玄が湧き上がる感情を後押しする。
奈々が見とる。あんなお嬢様が、こんな場違いと言ってもいい場所に、ホンマに来てくれた。
「――っしゃ! 行くでっ!」
左足を勢い良く振り上げ、その勢いのまま空高く飛ぶ。
俺の体は斜めに回り、ダンッ!と左足で着地し、チーム全員フリーズと同時に音楽も止まった。
「「「きゃあぁぁああ!!」」
「「今のバッファロー!? すげーーっ!」」
わぁっ!!と会場が盛り上がる。
「はぁっ……きまっ…た…」
最後の大技はバッファローと呼ばれる片足で踏み切るバク宙。
しっ……しんどっ!!
「しょーおたぁぁぁあ!」
ゼェゼェと肩で息をしてると、ステージに登る勢いで透がぴょんぴょん跳ねてる。
――って泣いとるしっ! 何でお前が泣くねん!



