「今日の朝、翔太とキョウが私を迎えにきてくれたのだって、昨日昴が翔太に話してくれたからなのよ? 仲直りさせてあげたいって」
「……」
「優しい優しい彼氏が落ち込んでるわよ?」
奈々の目線の先に、翔太とキョウに囲まれて座ってる昴がいた。
……確かにしょぼんとしてるけど……。
「あのまま決勝戦を迎えて勝てるのかしらねぇ? 透?」
ううっ……!
黒いオーラがあたしに圧力をかける。にっこり微笑む奈々の心情が、手に取るように分かった。
さっさと謝って励ましてこいよこのバカって言ってる。
奈々怖いナナコワイ朝の涙はきっと目薬――…。
「と、お、る?」
「ひぃ! 行ってきますぅううう!」
奈々から逃げるように、あたしは恥ずかしさを我慢して昴のもとへ全力疾走。
「――っ昴!」
「……トール」
「勝ってね!」
昴が問いかける間もなく、言い放つ。
「勝ったら何でもご褒美あげる!!」
ポカンとしちゃった昴にカーッとまた顔が赤くなる。
翔太とキョウも目を見開いていたけど、あたし自身、自分が何を口にしたか理解するのが遅れた。
「そっ、それだけ! じゃっ!」
ぐるんと踵を返して、今度は助けを求めるように奈々のもとへ全力疾走。
ごっ、ご褒美って……!
何する気なのあたしぃいいいい!!!



