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「あたし味噌ラーメン。奈々は?」
「和食定食」
昼休みはすっかり学食で昼食が日課になったあたしたち。
奈々は未だに注目を浴びるのが嫌みたいだけど、愚痴をこぼしながらも付き合ってくれる。
三神家お抱えの専属シェフが毎日作ってくれてたお弁当も、3日に1回くらいしか持ってこなくなった。
まあ……その理由が『口に合わなかったんじゃないかって、シェフが青ざめてたのが面白くって』というのはここだけの秘密です。
「昴たち遅いわね」
「だねー……あ、4時間目体育だからかな」
昴のクラスの時間割を完璧に暗記しているあたしが言えば、奈々は微笑む。
「彼女っぽいわね」
「げへへ」
「その笑い方なおしなさいよ」
気味悪そうに顔を歪ます奈々は見えないフリをして、出来立てのラーメンを持って席に座った。
「ねぇ透」
「んー?」
「朝の話だけど」
「どれ? ……お泊りの話?」
「そう」
何でまたその話なんだろ?
ズルーッと麺をすすりながら、言葉の続きを待つ。
「心の準備ってまだ出来ないの?」
「ん~……だって緊張するじゃん」
奈々は味噌汁を音も立てずに口に含む。毎度のことだけど、どうやったら音も立てずに味噌汁を飲めるんだろう……。



