「あと……イベント? せっかくなんだから、行ってきなさい」
「な……っ」
どうしてそこまで知ってるのよ!
ギッと睨むと、兄様は肩を竦めてワイングラスに手を伸ばした。
「お兄様は何でも知ってるんだ」
……この世で一番敵に回したくないわ。
「行かないわよ、イベントなんて」
「どうして?」
「興味ないもの」
……あ。
兄様を見ると、テイスティングした赤ワインに口をつけながら不敵に笑っていた。
「また言ったから、俺もまた言うよ。興味ないなんて、怖いだけなんだろう? 自分の知らない世界……それとも気持ちにかな?」
「兄様って性格悪い」
「父親譲りだからね」
クスクス笑って赤ワインを飲む姿をじっと見つめたけれど、やっぱりこの人に敵いそうな隙は見当たらない。
「……私、透以外にも大切な人たちが出来たの」
「うん。知ってるよ」
「その中の1人に、好かれてるの」
「うん。見てれば分かるよ」
……いつ見てたのよ。身内をストーカーで訴えるような妹にさせたいの?
やっぱりあのファイルは燃やして捨ててやろうかしら。
「怖い? 彼の真っ直ぐさが」
再びフォークとナイフを持った兄様は私から視線を外して、問い掛けてくる。
翔太が怖い? 私への気持ちを隠してるのか隠していないのか分からない、あんな超剛速球バカ、怖くなんてないわ。
だけどそれは、普段の話だと思うの。



