両親が嫌いなわけじゃない。
しっかりした親だと、愛情を注いでもらっていると、思う。
だけど両親が私に望むものは、ことごとく、私自身が望まないものばかりだった。
名誉も地位も要らないと言えば嘘になるけれど、多すぎると重荷になる。
私はふたりの子供だから全ては否定できないけれど、ふたりが持っている名誉も地位も、受け継ぐのは僅かでいい。
与えられることよりも、すでにあるものを譲り受けるよりも。
私は自分で選び、勝ち取る方が好きだ。
「俺に気を使っているのなら、それは大きな間違いだよ」
俯いてしまった私に、優しい言葉が降り注ぐ。
「……そんなんじゃないわ」
「俺は奈々の本当の気持ちが知りたいだけなんだよ」
思わず顔を上げてしまった。兄様は「ん?」と聞いてくるけれど、驚きが隠せない。
「それ、透にも言われたわ」
「ああ。……透も奈々のことが大好きなんだね」
「……なによそれ」
「照れなくてもいいのに」
「照れてないわよっ」
少し荒げた声に、兄様は可笑しそうにクスクスと笑った。
顔が熱い。自分が不機嫌そうに眉を寄せているのが分かる。
……何よりも一番に私を考えてくれる兄様。
透は、兄様と同じ?
私のことを、大切に思ってくれているのかしら。



