今日みたいなことは前にもあったけれど、次の日、透は普通に話しかけてきた。
何もなかったかのように、いつもと変わらない笑顔でそばにいてくれた。
透は信じられる。
そう思うのに、月日が流れると段々信頼が薄れていくの。
透は私から離れていくんじゃないかって。私にそろそろ疲れてしまうんじゃないかって。
不安になる。怖くなる。だから、傷付けるの。試すようなことをするの。
バカだと思うのに、そんなバカなことを繰り返してる。
「離れたら離れたで、悲しくなるくせに」
「離れてしまったら、それでいいわ。私が悪いんだもの」
「まるで透に恋してるみたいだね」
「――っ……何言ってるの兄様」
危うくコーヒーを吹き出すとこだったじゃない。この私がそんな失態、冗談じゃないわ。
「透が離れてしまったら、それで終わりなの? 奈々は黙っているの?」
「……仕方ないじゃない。自分でまいた種ですもの」
「謝らないの?」
……謝る?
「ごめんなさいって、事情を話すとか。しないの?」
「自分で傷つけておいて許しを乞うために弁解するの? 自分勝手もいいとこね」
真顔で言ったら、兄様が声を出して笑った。
なぁに? 失礼ね。本当のことを言っただけじゃない。



