「かしこまりました! 少々お待ち下さいっ」
女性スタッフが早足で店の奥に戻ると「きゃー!」と微かに黄色い声が聞こえた。
きっと他のスタッフと盛り上がってるのね。
どこに行っても目立って騒がれてしまう昴には慣れたけど……。
「昴、昴! 今度さ、映画見に行こうっ」
「movie? ウン、いこー」
優しく微笑む昴にポッと頬を染める透。
2人の口元はいつも揺るみっぱなしで、お互いのことが大好きってオーラが全開。
これには慣れないわ。
慣れないというか、誰から見ても付き合ってるって分かる感じが……正直とてもつまらない。
付き合う前は楽しみがいっぱいあったのに、付き合ってしまった2人は色ボケ全開幸せ満開で、平和すぎると思うの。
現われるライバルと言えばゆっこ先輩含む雑魚ばかりだし……大聖も大聖で、もうすっかり透とは友達に戻ってしまった。
何かアクシデントとか起こらないのかしら?
私を満たしてくれるような……。
「……なぁに? さっきからジロジロと。私の顔に何か付いてるのかしら」
ずっと浴びせられていた視線に耐えきれず、透と昴から視線を逸らして隣の翔太を見遣る。
「イベント、ほんっっまに来れへん!?」
またその話?



