「紅茶にすっかー……」
ボヤーっと自販機を見てお金を入れてる隼人がまさかスポーツ推薦を取るとは……。
「てか隼人、学校から家近いのに何で遅刻すんの?」
「あー? 朝帰りしたんだよ」
朝帰り?
いくら合格同然だからってホント呑気だな。
「友達とゲーム大会でもしてたの?」
以前混ぜてもらったことがあるからそう尋ねたのに、鼻で笑われた。
「ばぁーか。彼女だよ」
苺オレを差し出してニヤリと笑う隼人に眉を寄せる。
「……彼女?」
って、あの、前にカフェで待ち合わせてた彼女のことだよね?
「不潔だわ」
「はぁ!? 何でだよ!」
「汚らわしいわ」
「奈々!? 俺の前でも毒舌キャラになんのやめよーぜ!?」
アタフタする隼人をにこやかに見る奈々は、あの文化祭以来、隼人の前でも毒を吐くようになった。
「私が清楚なお嬢様だなんて、本気で思ってたのかしら」
「文化祭ん時の悪巧みにはウケたけどよ。なーんか慣れねぇんだよなー」
隼人は奈々にもホットコーヒーを差し出して、苦笑いを浮かべる。
「あら、ありがとう」
「ほら。透も」
さっき貰いそびれた苺オレをまた差し出す隼人。
……こういうとこは、先輩っぽい。
お礼を言ってから受け取ると、隼人はニヤリと口の端を上げる。
「じゃーな。勉学に励めよ1年共」
「推薦取り消しにされるがいい!」
「不吉なこと言うんじゃねぇよ!」
怒りながら去っていく隼人に、あたしと奈々は笑った。



