「視線が煩わしいわね」
全ての授業が終わり、清掃時間。1年生のあたしと奈々がなぜ2階にいるのかと、周りの先輩たちはジロジロと遠慮なく見てくる。
しかもあたしは端から見たら一体全体何を持ってんだよって感じだからね……。
「ライアン、探してる人の名前は分からないの?」
「あっ! そっか。名前聞いたらすぐ分かるよっ」
何で気づかなかったのか。あたしってほんとバカ!
「ライアン、名前は分かるの?」
こそっと話しかけると「ん~と…」と、考える声が聞こえた。
「おなまえは……」
「トール?」
「っ昴!」
毛先に緩いパーマがかかったプラチナの髪をハーフアップにして、グレーのカーディガンに深緑のブレザーを羽織った昴の登場に目がハートになる。
今日も100点満点中200点満点でかっこいい! 昴のために存在する制服! 好き!大好き!
「どしたの? ……それナニ?」
「えっ! あ、この子!?」
「……このこ?」
どうして2階にいるのかと聞いた昴の疑問があたしが抱えるものに変わって、硬直すると「バカ」と奈々が呟く。
うう……どうしよう。
お母さんかお父さんを探しに来たと言っても、生徒だから周りにバレると色々まずいかと隠密に探そうと思ってたのに……。
「昴っ! ちょっと来て、奈々もっ」
あたしは昴と奈々を人気のない場所まで連れて行う。
清掃時間の為どこもかしこも人だらけだったけど、外に設置された非常階段に続くドアの前には人がいなかった。



