「ほんとにゴメンね、トール」
「ううん。あたしも色々ゴメンね」
レイが去って、あたしと昴は奈々たちに急かされながら手を繋いで帰った。
昴の提案で昴の部屋にお邪魔してるんだけど、久々にふたりきりで少し緊張する。
「きのうのヒト、なんでもない?」
「ちぃ君? 何もないよ! ……えっとね、隼人のバイト仲間で、奈々が色々頼んでたみたい」
「またダマされた……」
うなだれて暗くなる昴が可愛くて、つい頬が緩んでしまう。
昴はレイに、一緒にアメリカに帰らないとあたしを傷つけると脅されていたらしい。
昴はレイが男だと分かっていたから、迂闊にレイを怒らせれなかったんだと話してくれた。だから何も言えずにいたみたい。
あたしを大事に大切に思ってくれてたんだと感じると同時に、疑ってしまった自分が恥ずかしい。
「ごめんね昴……。ありがとう」
微笑んで見上げると、昴はパッと顔を背けた。
……え?
「ちょ……何で!? 前も思ったけど何で顔逸らすの!? 悲しいじゃん!」
「ダメダメ! ムリッ」
「何が無理なのさ!」
ちょっと前。隼人のバイト先に行こうと教室まで誘いに行った時も、昴はあたしから顔を背けたけど、一体どうしたって言うんだろう。
顔を背けてあたしを見ない昴の顔を無理やり覗き込むと、昴の頬はほんのり赤く染まっていた。
「……え? なんで赤くなるの?」
「もーっ! みないで! ダメッ」
きゅーんと音を立てる胸。
なんで赤くなるのか分からないけど、昴可愛い! きゅん!
「へへ~っ」
いそいそと昴に抱きつくと、昴も抱き締めてくれた。
あったかい。幸せ。
やっぱりあたしには、昴しか有り得ない。



