「――あら。意外に早かったわね、元に戻るの」
教室に入ると、すでに登校していた奈々があたしの姿を見て微笑んだ。
「誰かさんは落ち込んでるあたしのこと、気持ち悪いらしいから」
ちょんまげ前髪に化粧っ気のない顔。ブレザーの下にオレンジのパーカを着てるあたしがニヤニヤして言えば、奈々はフッと鼻で笑った。
「残念ね。いつも気持ち悪いわよ」
「嘘だと言ってぇええええっ!」
「やめて近寄らないで」
奈々に飛びつくと思い切り顔を押しのけられたけど、あたしも奈々も笑っていた。
久しぶりに思い切りハシャいだ。
……奈々は昴を懲らしめようとしながらも、昴を試していたんだと思う。同時に、あたしを元気づけた。
昨日、ちぃ君がやって来てどう反応するのかも、分かっていたのかもしれない。
やっぱり奈々は凄い。
「今日はどうするの?」
床に座って、椅子に座る奈々の膝に頭を乗せて甘えていると、奈々はあたしの髪を撫でながら問い掛けてくる。
「ん~。昨日レイに宣戦布告したからなぁ……学食には行かない! 昴によく考えてほしいから、放課後は待ってるよ」
「そ。やっぱり透は今のままが1番いいわ。姿も、内面もね」
膝枕をしてもらいながら見上げると、奈々は妖艶に微笑む。
堪らなくて、膝枕だけじゃ物足りず奈々の両脚に抱きついた。
「んん~っ! 奈々好きっ!」
「気持ち悪い。今すぐ離れてちょうだい」
「ぐへへ」
「……」
離れないあたしに奈々は眉を下げながらも、口の端を軽く上げた。
その姿から、頑張れと言われた気がしたんだ。



