あたしはバカだけど、これが、あたしだ。
『――もしもしー?』
「あたし。透」
『ああ透? 待ってたよ』
電話越しにクスリと笑ったのは、電話をかけてと要求してきたレイ。
『昴の前から消えてくれるみたいだね。ありがとう』
顔を見なくても分かる、バカにしたような声。
『今日のあれ、変装? 昴が気付くか試してたの? まあ見事に気付いてなかったよねぇ~……ははっ! 愛されてないって分かって良かったね』
ベッドに深く座り、ひとりでペラペラ喋るレイの話に黙って耳を傾ける。
『ああそれから、昨日の会話どこまで聞いてたの? あの距離じゃ大して聞こえなかったでしょ。教えてあげようか』
「結構です」
『あはは! 強がっちゃって! まあいいけどね。昴はもう、アンタのもんじゃない』
「あたしの昴だよ」
『――……は?』
レイの声に怒りが見えたけれど、あたしは部屋に飾ってある昴たち5人の写真を見つめた。
「……あたしは、昴を諦めたりしない。仮に昴があなたを好きになったとしても、あたしは何度だって好きになってもらう」
キッパリ言い放つと、レイが笑い出した。
『バッカじゃないの!? アンタ、愛されてないんだよ! 昴だって言ってたよ? 透は本気じゃないってな!』
ギュッと携帯を握る。
負けない。
あたしのこの気持ちは、誰にも負けない。
そう、ずっと思ってきた。
「あなたの言葉は信じない。あたしは昴から直接聞かないと、信じないから」
『いい加減にしろよ……』
「昴を好きな気持ちなら誰にも負けたりしないっ!」
あたしは昴を信じる。あの叫び声を、あの悲痛な顔を。出逢ってからもらった、たくさんの気持ちや優しさを。
今のあたしには、きっと信じることしか出来ない。
「昴を諦めなきゃいけないのは……レイ、あなただよ」
レイの言葉を待たず、電話を切った。
自分に、素直に。
進め。立ち止まらず。
諦めずに、最後まであたしらしく。



