放課後、下駄箱で上履きから慣れないローファーに履き替え、顔を上げると体がギクッと固まった。
「止まらないで進んで」
後ろにいた奈々が耳元で囁き、あたしの背中を押す。
だって……。何で………?
昴が、待ってる。
昇降口の柱に寄りかかって、翔太やキョウと話していた。
その腕にはレイが寄り添っていたけど、昴が待っていることに変わりわない。
あたしには気付いてないはずなのに……何で?
「昴。奈々来たよ」
「……ナナ」
「なぁに? 土下座してくれるの?」
昴と奈々が向き合ってるそばで、キョウが自然にあたしをうしろに隠した。
「……トール、きてないの?」
「私じゃなくて透本人に連絡したらどうなの? それとも、そう出来ない、透に会えない理由でもあるのかしら」
「――……」
……昴。
お願い。何か言って……。
あたしの願いも虚しく、昴は奈々から視線を逸らした。
「…………」
「結局何も言わないのね。――残念だわ。これが、最後だったのに」
「……サイゴ?」
──キュルルル!!!
昴が眉をしかめた時、昇降口前の大広間に青いスポーツカーが急ブレーキで止まった。昴たちは一斉に、爆音が流れる車を見遣る。
……あれって……。
「昴」
奈々が昴を呼んでから、あたしに歩み寄ってきた。
「あなたはもう、透の王子様じゃなくなったってことよ」
奈々があたしの背中に触れた時、車からサングラスを掛けたグレーアッシュの髪をした人が出てきた。
「透ちゃん! お待たせ~っ!」
やっぱりちぃ君だ……でも何でここに……。
「トール……?」
後ろから昴に声を掛けられたけど、何の反応も出来ない。



