「あ、透! これ! レイって人からっ」
学食から教室に戻ると、クラスメイトが小さな紙を差し出してきた。
「……何か言ってた?」
「今日来てないみたいだから、この番号、すぐ透にメールしてって言われたよ」
「そっか。ありがとね」
レイも、さっきまで食堂にいたのがあたしだって気付かなかったのか……。
受け取った紙にはレイの携帯番号が書かれていて、馴れ馴れしくも『かけてね♪』と添えられていた。
グシャグシャに丸めて捨ててしまいたいけど、何かを話したいんだと思ってなんとか我慢する。
「電話するの?」
クラスメイトとのやり取りを見ていた奈々が、紙を覗き見ながら聞いてきた。
「うん、家に帰ったらね」
「そ。放課後は私に付き合ってくれるわよね?」
「うん? 別にいいけど」
「楽しみだわ」
「……今度は何する気なのっ」
「秘密よ。内緒。ふふっ」
席に着くと、奈々の頭にはもう放課後のことしかないらしい。
放課後かぁ……。
あたしは毎日、毎日昴を待っていた。
昴は下駄箱から昇降口に来て、あたしを見つけると優しく笑って、トールって呼んでくれた。
だけど今日は待たない。
待てないの。来てくれるのか、笑顔を見せてくれるのか不安で、怖い。
怖いんだよ、昴。



