「――ぎゃはははは! 超ブサイク!!!」
泣き止んだあたしの顔を指差して、腹を抱えて爆笑する隼人を睨む。
「ああウケる……最高ーっ」
ククッと笑いながら隼人は立ち上がって、ドアに歩き出した。
「アイスマン持ってきてやるよ。たしか店長室の冷蔵庫に入ってたから」
「……ありがとう」
「気にすんなブサイク」
「ブサイク言うな!」
涙で濡れたタオルを投げ付けると、「おっと」なんて言いながら軽くキャッチした隼人は笑いながら部屋を出て行った。
あたしはポケットから携帯を取り出して、起動したインカメラで自分の顔を見る。
「うわ……」
本当にブサイク……。
瞼が赤く腫れぼったくなっているだけなのに、酷い顔だ。
ずっと隼人の胸を借りていたから、ちょんまげの前髪も崩れてる。
はぁ……と溜め息を吐きながら前髪を結ぶゴムを取って、意味もなくスタッフルームを見渡す。
オープンしたばかりって言ってたけど、綺麗なとこだな……。
ぐしゃぐしゃと前髪を掻きながら分け目を探していると、隼人が戻ってきた。
「おら。耳にかけとけよ」
隼人が持ってきたのはピンクのアイスマン。触ると、ゼリー状の冷却材がぷにぷにして面白い。
早速耳にかけて隼人に見せると、「女王様みてぇ! 透がSとか!」と爆笑された。
お望みならムチでも持って隼人をいたぶるけども、今日は出来そうにない。
「腹減った? 何か食う?」
あたしの目線に合わす様に腰を折った隼人の瞳が優しくて、甘えたくなる。
「うん……。食べたい」
隼人は声を出さずに笑い、あたしを店へ連れ出した。



