ジワッと涙が浮かんだ時、スタッフルームのドアが開いた音がした。
「――今度は何事だよ、透」
タオルに埋めていた顔を上げると、ドアを閉める私服姿の金髪男。
「……隼人……」
あたしが座ってるソファーにバックを放り投げて、自分専用のロッカーを開けた隼人は鼻で笑う。
「ちぃに拾われたんだって? お前とことん犬人生だな」
隼人は着替え出して、あたしは再びタオルで目を覆った。
「…………捨て犬だもん」
「はぁ? 昴に捨てられたってか? ふっ……冗談はやめろっつーの」
「…………」
あたしは俯いて、体を震わせる。
冗談ならどれほど嬉しいか分からないよ。
バンッ!と力強くロッカーが閉まる音がして、隼人の足音があたしに近づく。
「冗談じゃねぇの? おい透。顔上げろ」
あたしはただ首を横に振る。
涙が、タオルに染み込む。
「透。泣くなら声殺すんじゃねぇよ。テメーを泣きやますのは俺の仕事だ」
今にもソファーから崩れ落ちそうなあたしを、隼人は支えてくれた。
「……冷やすなら、泣き止んでからにしろっつーの」
隼人の香水、キツい。強烈。
指輪、当たって痛いよ……。
あたしは隼人の肩に顔を埋めて、大声で泣いた。
隼人はずっと赤ちゃんをなだめるみたいに、あたしの背中をポン、ポンと、一定のリズムで叩いてくれた。



