──ドンッ!
「イッテ! ……わっ! ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」
人にぶつかって、勢い良く地面に転んでしまった。
あたしも謝らなきゃいけないのに、顔を上げれない。アスファルトに、涙が染み込んでいく。
顔を手で覆って俯くと、見知らぬ温かい手があたしの肩を掴んだ。
「もしかして、透ちゃん……?」
ねぇ昴。
それともあたしが、夢を見ていたのかな。
昴と両想いだなんて、やっぱり夢だったの?
「大丈夫? はいタオル。冷やした方がいいよ~」
「……ありがとう」
ぶつかってしまったのは隼人のバイト仲間、ちぃ君だった。
買い出し中だったちぃ君はあたしが泣いてるのに気付いて、気を使ってくれたみたい。
いい匂いが立ち込めるパスタ屋のスタッフルームに、あたしを連れて来てくれた。
「んじゃ俺店戻るから、何かあったら呼んでね? 隼人、もうすぐ出勤だから」
黙って頷くと、ちぃ君は微笑んで店に戻った。
冷えたタオルで目を覆うと、そのままだらんと首を下げる。
……あたし、何してんだろう。
さっきから携帯が鳴っている。
店に着いてすぐマナーモードにしたけど、規則的な振動が止むことはなかった。
きっと奈々たちが心配してる。
だけど今は駄目だ。まだ、涙が出ちゃう。
昴を責める言葉しか、出てこない……。
どうすればいいの? あたし、昴の彼女じゃなくなるの?



