──ガタガタッ!と大きな音がして、ビクリと肩を跳ねさせる
何? 今の……机の足が地面を擦る音じゃない?
ゆっくり壁に沿って左に曲がり、昴のクラスの様子を伺う。
後ろのドアが開いていて、簡単に中の様子を見ることが出来た。
「…………」
案の定と言えばいいのか。予想通りと言えばいいのか。
決して広いとは言い難い教室に昴とレイ、ふたりきりの教室はこんなにも広く見えるのかと思った。
だけどその光景に、今すぐにでも逃げ出したくなってしまった。
それなのに足が動かない。
ズッシリと、まるで鉛でも付けられてるみたいに、ビクともしない。
ただあたしの頭と目だけは、理解しようと仕切りに動いていた。
昴とレイが抱きしめ合ってる、この状況を。
……何を、してるの?
昴……ねぇ。今日はあたしとパスタ食べに行くんだよね?
隼人のバイトしてる姿を見て笑って、楽しく過ごす予定だったよね?
ねぇ。一体何をしてるの……?
「leraie……rs………ru…」
教室の真ん中で抱き締め合っている2人。昴は何か言って、レイの肩を掴んで遠ざけた。
レイの制服が少しはだけているのが見えて、目を逸らしたくなる。
……頭、クラクラする。
レイは綺麗な手を昴の頬に添えて、何かを言ってる。
よく聞き取れないけれど、ふたりともあたしに気付く様子はなかった。
「……one mo……」
レイが真剣な目をしてる。昴はそれに答えるように真っ直ぐレイを見て、レイの手を握ってる。
「……アイシテル……」
――愛してる?
……そう、だったのか。
あたしは“ダイスキ”で、レイは“アイシテル”なんだね……。



