「んん~……来ないなぁ……」
放課後になり昇降口で昴を待っているけど、翔太とキョウが来ただけで、一向に昴が来る気配がない。
「奈々たち、先に帰ってていいよ! あたし待ってるし、電話かけてみるから!」
奈々たちにそう告げると、翔太が「……あんな?」と言い辛そうに眉を寄せた。
「昴、HR終わってすぐレイに連れてかれたねん。昴手ぶらで連れてかれたから、携帯持ってへんと思う」
「ちょっと。そう言うことはもっと早く言いなさいよ」
「せやかてすぐ戻ってくると思ったんや!」
「まあまあ。迎え行った方が早いかもね。すれ違わないように俺ら待ってるから、行ってきなよ」
……レイが昴を連れてった? どこに? 何で?
「――っ! 昴からかもっ」
ブレザーのポケットから着信音が鳴り響いた携帯を取り出したけど、すぐに着信は切れてしまった。
携帯を開けば、昴からの不在着信が1件。
……なんでこんな短いんだろ。間違い電話、っていうのも変だよね……。
ぐらりと目眩にも似た不安が一気に胸の奥で渦巻く。
「ごめん! 迎え行ってくるね!」
奈々たちの顔を大して見もせず、あたしは上履きに履き替えずに校内に戻った。
何かすごく嫌な予感がするのに、脚は躊躇うことなく前へ進んでいく。
歩きながら辺りを見回したけど、プラチナの髪は見当たらなかった。
廊下には誰もいない。生徒はみんな部活に行ったか、駅ビル付近で遊んでる時間だ。
スニーカーがキュッキュッと音を立て、静寂な廊下に響く。階段を登って左に曲がれば、すぐに昴のクラスだ。
「……」
レイは昴を連れ出して、何を話したんだろう。
昴とレイが一緒にいるという現実がまたあたしを不安にさせ、足取りを重くさせたかと思えば忍ばせる。
階段を登りきると、微かな話し声が聞こえた。



