「ぎゃあっ! 昴!」
視界に入ったのは、乗っていたバランスボールから後ろへ落下した昴。
バランスを崩したらしい昴は床に後頭部をぶつけたのか、仰向けになって呻いていた。
「大丈夫!?」
「イタイ……」
側に駆け寄ると頭を押さえて涙目の昴がいて、長い脚だけがバランスボールに置き去りにされた妙な体勢に思わず笑ってしまう。
「……ぷっ」
「!?」
仰向けになったままあたしを見上げる昴の目が驚きに見開かれた。
「ナンデ!?」
「ふっ…くくっ……ご、ごめっ……」
必死になって口を閉じるけど、可笑しくてしょうがない。
「背中から転ぶって……バランス感覚悪すぎ……っ」
「トールヒドい!」
だって、学校一のモテ王子がバランスボール乗れなくて床に頭ぶつけたなんて……。
「あははははっ! も……可笑し……っ!」
「トールのバカーッ!」
ごめんね昴。
あたし今、すごい幸せな気持ちになっちゃってるよ。
昴のそんなマヌケな姿、きっとあたししか見れないと思ったの。
それってすごく、幸せなことだと思わない?



