「トール……ナンデしってるの?」
「だって大好きなんだもん! あたしファンなんです!」
「あははっ! いや、本当凄いな。引退して20年経ってもファンだと言われるなんて……。ありがとう、嬉しいよ」
そう微笑むのは昴のお父様でもあり、オーランド・エヴァンスでもある。
20年前、若干19歳で映画史に残る名俳優として世界を賑わせた、アメリカの新人俳優。
数々の賞を総ナメして、演技の神童と持ち上げられていたのに21歳でハリウッドから消えてしまった。
出演した映画は5本しかない。
あたしはお父さんの影響で映画好きになった。
20年前と言ったら、あたしのお父さんは二十歳。それなりに青春中。
これを観ろ!と小さい頃からオーランド・エヴァンス主演の映画を何回も観させられていた。
「じゃあお父さんの影響なんだ。感謝しないとな」
熱弁していたあたしが話し終わると、ソファーに座っていたお父様は微笑む。
昔からずっと大好きだった人が目の前にいるなんて……夢のようです! ありがとう神様!
「あの、どうして辞めちゃったんですか? あんなに素敵な演技出来るのに……」
「日本が好きなんだ」
ニコッと笑うお父様に、目が点。
え……? 辞めた理由、それ?
「日本で撮影したことが1回だけあってね。それで気に入ってしまって」
「あ! それでも僕らは恋をする!」
「あはは! そうそう。もう1回、今度はプライベートで来たいと思ってたんだけどね。仕事が忙しすぎて、行けなかったんだ」
そうだったのか…。でも、それで辞めるなんて、どんだけ日本を愛してくれてるんですか……?
昴とお母様はニコニコしながら黙って聞いている。
「まあ、それだけじゃないけどね」
「えっ! 他に何かあるんですか!?」
身を乗り出したあたしを見て優しく微笑むお父様に、思わずドキッとしてしまった。
「恋をしていたんだよ」
「――……恋……ですか?」
「アメリカに留学で来ていた彼女にバーで出逢ってね。すぐ恋に落ちてしまって……だけど彼女は日本に帰らねばならなくなったんだ」
「ヤダ。恥ずかしいわよ」
彼女ってやっぱりお母様のことなんだ!



