「ここ? トールのヘヤ」
2階に上がってすぐ、あたしは自分の部屋のドアを開けた。先に部屋へ入ると、昴は興味深々の顔をしながら控えめに中を覗く。
「キレイ~」
ギクッと不意をつかれたのを誤魔化すように体の後ろで両手を組みながら、笑顔を作った。
「ウフフッ! まぁねっ!」
ごめんなさい昴。のんにメールして片付けてもらいました。
きっとクローゼット開けたら雪崩起きるからね。
ヒヤヒヤしながらドアを閉めると、部屋を見渡していた昴はあたしに振り返る。
「トールのヘヤ、これてウレシー」
「……」
来れて嬉しい? そんなの……あたしの方こそ来てもらえて嬉しいです!
王子があたしの部屋にいる奇跡!
「ナナだー」
壁に掛かるコルクボードに張りつけられた写真を眺める昴は、楽しそう。
なんか、ほんと、奇跡だよなぁ……。
昴と初めてメールした時、すぐそこのベッドでゴロゴロ転がりながら喜んで、壁に頭を強打したのがつい昨日のことのようなのに。
昴があたしの部屋に遊びに来るなんて。しかも、彼氏として……。
ポッとひとりで頬を染めていると昴は「oh~」なんて言いながら、いつだか流行ったバランスボールにまたがって喜んでいた。
次から次へと行動変わりすぎだけどそんな落ち着きない昴も可愛いです! きゅん!
──ゴンッ!
え?



