──ガラッ!
「あっ! 透ー! 今日に限って遅刻するとか、さすがっ!」
「おはよーっ。これ友チョコ~」
「ハッピーバレンタイーン」
ちょうど昼休みになった教室に入ると、クラスメイトの女子が友チョコを配っていた。
「あり……はぁっ……ありがど……。ぜぇっ……はぁ……」
肩で息をするあたしなどお構いなしに、チョコを渡してくるクラスメイトにお礼を言う。
窓際の自分の席に着く頃には、両手いっぱいチョコだらけになってしまった。
「随分ゆっくりな登校ね」
机に手を付いてうなだれるあたしに、前の席の奈々が悪戯に笑う。
「寝坊……っしちゃって……」
呼吸を整えてから席に座ると、一気に体が重くなった。
つ、疲れた……。
駅から学校までもちろん猛ダッシュして、朝ご飯も食べてないから若干気持ち悪い。
「うぐっ!」
ぐったりしていると、突然奈々が「汗拭きなさい」と顔にハンカチを押し付けてきた。
「あ……ありが、と……っ!?」
「軽くでいいからメイクしてちょうだい」
「え、いや……それより早く食堂に……」
あたしのフェイスラインを掴んで引っ張ってくる奈々は、笑顔を浮かべる。
「その金茶の髪に黒い眉毛のまま昴に会うの? ビューラーもせずに? 洗顔だけした顔で? 何の冗談かしら」
「は……はひ……」
ドンッ!とご自慢のポーチを机の上に置いた奈々。
結局逆らうことは出来ず、買っていてくれた苺オレを飲んで大人しく黙ることしか出来なかった。



