──バレンタイン前日──
「受け取ってくれるかなぁ~っ!」
「これ可愛くない?」
夕方の街はピンク一色。百貨店の特設コーナーには制服姿の女の子で埋め尽くされ、キャッキャッとみんな騒いでいる。
可愛い……きゅん……。
「ちょっと透。見惚れてないでさっさっと買ってきなさいよ」
隣にいた奈々があたしが持ってる大量の材料を指差すと、「可愛いもの好きもそこまでくると病気ね」と言って、棚に並べられているチョコを興味無さそうに眺め始めた。
奈々は結局、手作りなんてしないときっぱり翔太に宣言した通り、買う気すらない様子。
それとも、もう買ったのかな……。
あたしは大量の材料をレジまで持っていき、購入してから奈々に歩み寄る。
「奈々、ホントにあげないの?」
「あげるわけないじゃない」
「何でー!? 翔太かわいそう!」
「想像してみなさいよ。チョコなんてあげたら学校中走り回って自慢するに決まってるわ」
うわぁ……やりそー……。
「でもいいじゃん。恥ずかしいけど、あたしだったらやっぱ嬉しいなぁ……」
「私は恥をかきたくないの」
「でもさぁ、それって翔太に愛されてるってことじゃん」
嬉しくないわけないっしょ!
「ねぇ、そうじゃない?」
「お黙り透」
「……ぷっ」
思わず吹き出した瞬間、ゴウッ!と奈々から黒いオーラが噴き出した。
「なぁに? なんなの?」
笑顔怖いんですけど……!
「なんでもないです!」
そう言えば奈々は艶めく黒髪をなびかせて、あたしから景色へ視線を移す。
照れちゃってさぁ~。
ほんと奈々は不器用すぎるけど、可愛いんだから。
まぁちょっと……いやだいぶ、翔太は可哀相だけどね……。



