「これで分かっただろ透。お前にとって、男は昴先輩だけだってことだよ」
「まじでイテェ」と言いながら立ち上がった湊磨は、ガシガシと頭を掻く。
「何……意味分かんないし……ほっぺ大丈夫? てか何すんのさ……」
泣きながら尋ねるあたしを、湊磨は可笑しそうに笑った。
「お前、俺にキスされそうになって嫌がったじゃん」
「嫌に決まってんじゃん……てか、相談の答えに、なってない……っ」
ぐすっと鼻をすすると、湊磨は苦笑しながら困ったように忍へ視線を送る。
「要は意識したってことでしょう? 昴は好きな人で在る前に、男なんだって」
あたしが求める答えを出したのは、昴の後ろに立っていた奈々だった。
「な、に……。奈々まで意味分かんない……昴は男じゃん……」
奈々がイラッ!としたのが伝わったけど、今のあたしにはどうしようもない。
「透は昴のことが今までよりもっと大好きになってしもうたって話やろ? 好き過ぎて困るって話ちゃうん?」
「そうだね。今日の透は何ていうか……昴に片思いしてた時みたいだったよね。今年の夏みたいな」
「あー! せやせや! 付き合ってない頃の透みたいやな、今の透。昴と目ぇ合うだけで真っ赤になんねん!」
翔太とキョウが笑い合っていると、何を悩んでいたのかあやふやになってくる。
「あのねぇ透。昴のこといつも可愛い、かっこいい、好きって言ってるけど、自分だけそう感じてると思ってる? 昴だって彼氏で男なんだから……分かるでしょう?」
「…………」
奈々の言葉に、あたしは恐る恐る昴を見上げる。
深いブルーの瞳が、切なげにあたしの瞳を見ていた。
……あたし、昴に手を繋がれると胸が温かくなる。
頭を撫でられると、頬が緩んじゃう。抱き締められると、体温が伝わって安心する。
キスされると、幸せな気持ちになるの……。
そう思える相手は、昴だけだ。
他の人なんて考えられない。



