「やだ私ったら、つい興奮しちゃって……! 透大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ……」
「立ち話もなんだしどぉぞっ! 今お茶入れるわねーっ」
スキップしてリビングに行ってしまったお母さんからやっと解放されたあたしは、ぐったりと壁に寄り掛かる。
「オカーサマ、トールそっくり」
「……お願いだから言わないで」
奈々にも言われたことあるけど、あたしは絶対認めませんっ!
「改めてましてぇ。透の母です~」
リビングのソファーに腰掛けたお母さんは、テーブルを挟んで向かい合う昴に笑顔を浮かべる。あたしは昴の横で、それを眺めていた。
「オカーサマ、カワイーですネ」
にっこり笑う王子にお母さんの目はハート。
……昴ってすごいな。
あたしだったら絶対ガッチガチに緊張すると思うのに、昴はちっとも緊張してない様子。
あたしはお母さんが淹れた温かいミルクティーを飲みながら、ちらちらと廊下に繋がるリビングのドアを見遣る。
出来ればリビングには寄りたくなかったけど、仕方ない……と思っていると、「ちょっと透!」とお母さんに呼ばれた。
「ちゃんとこちらの王子様を紹介してよっ」
「え? ……昴だってば」
「知ってるわよ! さっき自己紹介してくれたものっ。この王子様は透の何なの?って聞いてるの~」
分かってるくせにあたしの口から聞きたくて仕方ないんですね……オカーサマ。
意を決してカップをテーブルに置き、隣に座る昴を紹介するように手の平を上へ向けた。



