昴は少し息を乱して、床にしゃがみ込む湊磨の前に立ちはだかっている。
「いっ……! てぇ~」
湊磨は右頬を押さえて上半身を起こし、その時初めて昴が湊磨を殴っていたことに気付いた。
え……殴っ……殴ったの!? あの昴が!?
いつってもちろんさっきだろうけど、何で……っ。
「――!?」
いまいち状況が理解出来てないあたしを、昴が突然抱き寄せた。
「She is my thing」
ボッ!と顔が燃えるように熱くなっても、あたしを抱き締める昴の手がより一層力強くなる。
『彼女は俺のものだ』
う、わ……。
ダメ。無理。そんなこと言われたら……。
「~っ! 離して昴っ!」
昴を押しのけて離れようとすると、手首を掴まれてしまった。
「……離して……」
周りをよく見ると、奈々と翔太とキョウまでいる。昴は眉間にシワを寄せて、怒っているようだった。
だけど目を合わせることも出来なければ、真っ直ぐ顔も見れない。
「お願いだから……離して……」
離してと言うたび、あたしの手首を握る昴の手に力が入った。
「……っ……昴、お願い……」
握られた部分から、熱が込み上げる。
得体の知れないものが、体の芯を焦がしていく。
苦しくて、堪らなくて、歯を食いしばって俯いた。
「――ナクほど……イヤなの?」
違う。違うの、昴。
嫌なんじゃない。
どうしようも出来ないくらい、涙が出るくらい、大好きなの。



