「忍。どうよこれ」
湊磨は忍に問いかけながら首を傾げる。
「まず言いてぇのは、子猿すらドキドキさせられないってヤバくね?」
「あたし人間なんですけど!」
「やっぱり? 俺男としてヤバいよな」
「だからあたし人間んんんん!!!」
「黙ってろよ子猿」
「なにさ! 忍なんてセンター分けのくせに!」
「はん? 今すぐ顎かち割ってやるから顔貸せ」
ひぃーー!!!鬼ーーーっっ!!!
慌てて湊磨の腕を掴んで盾にすると、「忍~っ」と湊磨は笑う。
「冗談だろ。ビビりじゃね?」
「忍が言うと全っっ然! 冗談に聞こえないの!」
角生えてたもん! 額からにょきって2本の角生えてた!
やっぱり忍は鬼の子なんだ……奈々の黒いオーラから生まれ落ちたんだ……。
「つーか透は特殊なんだろ」
めんどくさそうに欠伸をする忍に「特殊?」と湊磨は眉間にシワを刻む。
「昴先輩以外の男は男じゃねぇってことじゃね?」
「あ~……昴先輩しか男に見えないってことか」
「……ふたりとも何言ってんの? 忍も湊磨も男でしょ?」
「「……はぁ……」」
平然と言ったあたしに忍も湊磨も呆れ顔でため息をついた。
何さ! どう見たってふたりとも男じゃんか!
「ぐぇっ!」
眉を吊り上げていると、湊磨がいきなりあたしを抱き締めた。
「いきなり何っ!?」
「あ~。癒やされる~」
そう言ってぎゅうぎゅう抱き締めてくる湊磨に、忍は呑気に「透って癒やし系じゃなくね?」とか失礼なことを言う。



