「怒るなって透~。お前にはビリヤードの才能がなかっただけで……ぶふっ!!」
「…………」
頬を膨らますあたしは、あれからどんなに教えてもらって全く上達しなかった。
湊磨は目に涙を溜めてひたすら爆笑するし、忍は真顔でドン引きしてるし。
あたしは嫌になってビリヤード台の近くにあるイスに座って、だんまりを決め込んでいた。
「機嫌直せって!」
あたしのちょんまげ前髪を引っ張る湊磨にそっぽを向くと、「つーか」と忍が口を出す。
「昴先輩に教えてもらえば良くね?」
「――ッバカ! 忍っ!」
「何だよ。昴先輩ビリヤード上手そうじゃね?」
「しーのーぶー!」
「はん? ……何だよ。何ガチへこみしてんだ透」
昴の名前を聞いただけで頭も肩も気分もとにかく色々落とすあたしは、フッ……と笑った。
「昴……? 昴……ははっ……」
「キモくね? 何、コイツどうしたわけ?」
「あー……昴先輩と喧嘩?したんだと」
「マジで?」
めずらしく驚いたような声を出す忍に、更に気分が落ちる。
「喧嘩っていうか……あたしが昴を傷つけたというか……怒らせたというか……嫌われたというか……」
「ハッキリしろよめんどくせぇな」
「忍バカお前っ! 気遣いってもんがあるだろー!?」
「あいにく持ち合わせてないんで」
さすが忍……前々からどこか奈々と似たようなものを感じていたよ……ふふ。
言葉を発する気力もなくなってきたあたしの耳に、忍の溜め息が聞こえた。
「何でそうなったんだよ」
「……え……っと。昴に、おデコを触られそうになって……」
「再現しろわ」
忍が言いながら一歩下がって、あたしと湊磨は顔を見合わせる。
すると湊磨が触ろうとする真似をして、あたしは勢い良く立ち上がった。



