「忍は口悪いけどいい奴だし! 大聖も優しくてバスケ上手いしなー。お前は昔飼ってた犬に似てる! チワワ!」
「バカにしてんのか! チワワに謝れ!」
「こんなちっせぇの!」って言いながら、片手でサイズを表す湊磨。
いやそれピンポン玉くらいの大きさしかないし……犬どころか番犬にすらなれないじゃん!
「なー。ビリヤードやらね?」
3本の缶ジュースを買ってくるなり、戻ってきた忍が言う。
「おー! いいね~っ」
「あたしやったことないよ」
「透運動神経いいからすぐ出来るようになるって!」
……湊磨ってばいいこと言うじゃん!
あたしたちは早速ビリヤード台がある場所に向かう。
「ナインボールすっぺ。基本的に数字の順番に入れてって、最後に9を入れたやつが勝ちってゲーム」
「ああ、なるほど」
「んじゃブレイクショットは俺な」
忍が構えて打つと、ビリヤード台の中心に並べられていた9つのボールが綺麗に散らばった。
……あの白いボールを打って、1から順に穴に落とせばいいのか。
忍と湊磨をジーッと観察して何となく理解していると、あたしの番になる。
忍が2つ落として湊磨が1つ落としたから、あたしが狙うのは4と書いてあるボール。
指が難しいなぁ……と思いながらキューを構える。
──スカッ!
「…………」
「ぎゃゃはははは!!」
「なんでぇええ!?」
キューの先は白いボールにかすっただけで、無惨にも4のボールは微動だにしなかった。
「まじで下手くそじゃね?」
忍が真顔で言う横で、湊磨は「ひっ、ひぃ~!」とか腹を抱えて爆笑してる。
「笑いすぎだから! 仕方ないじゃん! やったことないんだから!」
「ぶふーーーっ!」
きぃいいいいい!! 湊磨のバカ! その赤髪なんか燃えればいい!



