「遅いわ奈々ぁー! 待ちくたびれたやろっ」
「なぁに? いつも待ってあげてるのは私だってこと、お忘れかしら」
「言ってみたかっただけやん!」
「二度と言わないでちょうだい」
「……」
めずらしく先に翔太たちが昇降口で待っていて、その近くには湊磨と忍もいた。
昴はあたしを見てるけど何も言ってこない。
やっぱりドキドキしちゃうし……。
「……す、ばる」
おずおずと昴の目の前で立ち止まる。
「あの……今日、湊磨と忍と遊ぶから一緒に帰れないんだ」
話を聞いてもらうとはさすがに言えない……。
昴は近くで話している湊磨と忍を一瞬見遣ってから、口を開いた。
「ウン、わかった」
「……ごめんね。また明日」
「……」
昴は何も言わなかったけど、向かい合ってることにも耐えられなくて、湊磨たちの元へ向かう。
……何であたしが傷ついてるんだ……。
「あれ? 透一緒に帰らへんの?」
昴から離れていく足を止めると、翔太が嫌がる奈々の手を握り締めながら聞いてきた。
「……うん。湊磨と忍と遊ぶから」
「ふぅん? ほんなら俺らも遊びに行くべきやろ! 奈々!」
「どこ遊び行くの?」
聞こえてないフリをする奈々の隣に立っていたキョウが口を開く。
「えと……バスケ?」
ちゃんと決めてなかったから、尋ねるように湊磨たちに視線を送った。
「ん? バスケ? ああ、近くのゲーセンにあるバスケやろーぜ!」
「ゲーセン行くみたい」
「そう。楽しんでね」
「ほなまた明日な~!」
「……バイバイッ」
乾いた笑顔を向けると、奈々は黙ってひらりと手を振ってくれる。
昴はやっぱり何も言わずに、あたしじゃない何かを見ていた。



