「――どこに行く気なのかしら。透?」
放課後になって湊磨たちと帰ろうと席を立ち上がると、早速奈々に呼び止められた。
「どこって……遊びに?」
「昴と帰らないの?」
「帰れないのっ!」
「昴に言ったの? 言ってないわよね? 言いなさい」
「奈々が伝えといて!」
今のままじゃ昴に会えない!
奈々は目の腫れが引いたあたしを凝視してから、ニッコリと笑った。
「イ、ヤ」
そう言うと思ったー……。
「透っ! 大聖彼女と遊ぶから無理だって……って、どうした?」
「……昴に合わす顔がない」
湊磨はどんより暗くなるあたしの肩を抱いて、「まあまあ」とかキョウみたいなことを言う。
「ちゃんと話聞いてやるから元気出せって! 先昇降口行ってるぞ!」
あたしが着てるパーカーのフードを被せながら笑った湊磨は、鞄を持って忍と廊下へ出て行った。
「……奈々。あたしどうしたのかな」
フードの裾を引っ張りながら俯きがちに問えば、奈々は腕を組むだけで何も言わない。
「昴……に、触られるの嫌じゃないんだけど、何かすごい恥ずかしくて……!」
「だから昼の、あの態度?」
「うん。顔も見れないし……。あたしどっかおかしくなったのかなぁ!?」
だって学校では毎日顔見てたのに! 毎日頭撫でられてたし、手だって繋いでたのに。
「うぅー…」と悩むあたしを奈々は横目で見ながら、鞄を肩に掛けた。
「とりあえず湊磨たちと遊ぶことは昴に言いなさいよ。それでもまだ恥ずかしかったら話聞いてあげるわ」
え……絶対まだ恥ずかしいと思うんですけど……。
奈々はまるであたしの気持ちを無視するように、先に歩いて行ってしまった。



